市原市に住む 倉田知典 さん(32歳)は、仲間作りの会『ウィズ
エブリワン』会長です。ユーモアあふれる明朗快活な人柄に魅了される人も数多く、会員数は7歳〜65歳まで(主に20代中心)の男女148名です。
倉田さんは8ヶ月の早産が原因で9歳までは寝たきりの状態でしたが、努力の結果、全介添えを要しながらも多少の自力歩行が
できるまでになりました。しかし子供の頃から、一つ年上の兄に自分を重ねることも多く、スポーツや恋愛などを自由にしている ことが羨ましかったといいます。
『エブリワン』では、『障害者』ではなく『障碍者』という字を使います。それは「碍」が「妨げ」という意味で
あったのに対し、「害」は文字通り害であり、他人を害するという意味が あるからだそうです。障碍者が決して害ではない ことを、妨げ以外の何ものでもない
ことを、くみ取って欲しいという願いが込められています。
「食事もトイレも自分ひとりでは こなせないし、出かけることも
ままならない。『エブリワン』を始めるまでは、孤独で寂しい毎日でした。家族以外で接してくれたのは、福祉職員とボランティアだけ。対等な関係は望めませんでした」。
そんな思いから抜け出そうと何でも語り合える『本当の仲間作り』を決意。10年前に『ウィズ
エブリワン』を発足させました。自分の辛さを語ることで、健常者の理解を求めようとしていた この頃は、「駅にエレベーターを」とか「障碍者を平等に」など
と一方的に権利を主張してばかり いて、市長にも強く要望していたと いいます。
「『健常者』と『障碍者』という心の区別を なくそうと、話し合いが持たれていましたが、ひとりの人間として接するには どうしたら いいかを語る人は
あまり いませんでした」と当時を振り返ります。
『ウィズ エブリワン』は人と人との心を結ぶ出会いの場。定例会などでは、お台場、富士急ハイランド ツアー、ジェフ ユナイテッド
市原の観戦、食事会など さまざまです。活動を続けて いくなかで、本気で語り合える仲間ができたと喜びを感じつつ、『障碍』とか『健常』って何 ?
と思うようになったと いいます。「身体が不自由な ことは障碍であるけれども、共通な話題があれば、お互いの心の壁も なくなって いくでしょう」。
『心のバリアフリー』から『心のハーモニー』へ。「『バリアフリー』って いうけれど、心の壁や自分の欠点を取り除くことは簡単には
できません。最初は『バリア アリー(在り)』で いいんじゃない。みんな違って
あたりまえ、個性があるからこそ、『心のハーモニー』を奏でようと思うのです」。
自分の感情を素直にさらけ出せたとき、相手の気持ちも変わります。「倉田さんは、相手の気持ちを引き出すのが上手。普通に おしゃべり
していても、いつの間にか悩みを話している自分に気づくときが よくあります。仲間では これを『倉田マジックに かかる』って
いうんです」と笑うのは会員の下川雅美さん。
また、月1回程度、県内外の高校生・大学生、福祉などの職員に対して講演活動も
こなします。権利や平等などを一切述べず「みんなの気持ちを分かりたい」と語りかける姿に、聴講者は大変驚くと
いいます。「人の気持ちが分かる人に出会えて良かった」という感想を頂いたときが、今までで一番嬉しかったそうです。
今年秋にはNPO法人化が予定される『ウィズ
エブリワン』。「福祉でなく、あくまでも仲間作り『どんな人でも集えるコミュニケーションの会』にしていくのが理想です。マスコミやインターネットを使って全国各地はもちろん、世界中の人との情報交換もして
いきます」と意欲を語ります。とはいえ、外房地域の会員は現在3名。ただいま会員募集中。春のイベントも いちご狩り や サッカー観戦など盛り沢山です。
「人は個性があるから おもしろい。いろいろな人に支えられて お互いに感謝できれば、いい社会だと思いませんか。これから
どんな人と出会えるのかワクワクしています」と満面の笑みで語ってくれました。 (本城)
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