No.67
 福野加奈子(22)

 
2002.12.7 掲載
互いを認めることの大切さ


 私は、帝京平成大学で福祉情報学科を学ぶ学生です。進路に福祉を選んだのは、不登校になった中学生のとき、私を精神的に支えてくれたカウンセラーの先生の存在がありました。今考えると、問題は自分自身にあったように思います。
 自分が相手にどのように思われているのか気になり、友だちのストレートな言い方がとても怖くて、次第に学校に行けなくなりました。最初、周囲は私を説得しましたが、そのうち私を理解してくれるようになりました。両親、学校の先生には とても感謝しています。不登校は卒業するまで続き、私は児童相談所に通っていました。そこで出会ったのが、私を全面的に受け入れてくれたカウンセラーの児童心理士の先生でした。
 その後、先生のすすめもあって私は定時制の高校に進学しました。そこには私と同じように中学時代つまづいた子もいて、とてもアットホームな雰囲気でした。理解しあえる仲間も たくさんいました。昼間のアルバイトも私にとっては、大切な社会勉強でした。同世代と話すのが苦手な私は、あまり人と会うことのない製造業を選んで働いていましたが、ある時お弁当屋さんで販売を手伝うことになりました。学生が多い街では同年代と話す機会も多く、次第に環境にも慣れて以前のように意識することも なくなっていました。
 そんな高校生活を送る中で、今度は自分が悩んでいる人の助けになりたいと思うようになり、福祉を目指しました。今年の夏は、希望して知的障碍の施設で研修しました。そこで私が学んだことは、相手を理解するためには、専門知識の有無ではなく、ある期間を共に過ごすことの大切さだということでした。それは、障碍があるとかないかではなく、人対人なのだと思いました。
 親元を離れての学生生活も3年目。これまで、様々なボランティア活動に参加して来ました。多くの場合が、1回限りの出会いに終わってしまうボランティアでしたが、今年2月から参加しているエブリワンには、相手を理解するのに必要な継続的な友だち関係があります。自分たちの存在を外に向けて発信する前向きな姿勢があります。
 不登校の5年間は、私にとってはとても辛い時間でした。なかなか その事実を他人に話すことは出来ませんでした。時間が経ち、そのことが自分を成長させてくれたのだと思える今、素直に話せるようになりました。自分を認めてくれる人が周囲にいることが、どんなに安心で幸せかということを、改めて思います。
 前向きに語り会えるエブリワンは、私にとって素晴らしい仲間となっています。


 

No.66
岩本靖博(34)

 
2002.11.2 掲載
感謝し合う中で人は前進する

 私がエブリワンに出会ったのは数年前。シティライフのステキな記事がきっかけでした。
 以前ヘルパー2級の資格を取得するため、福祉施設へ実習に行ったことがあります。心和む お年寄りとの笑顔のふれ合いから、ますます福祉に関心を持っていました。そんな理由から「みんなで生きる」は、毎回 読ませて いただいていました。最初はボランティア サークルだと思っていましたが、毎月読むうちにエブリワンは福祉ボランティアでは無く、互いに友達作りを進める場であることが分かりました。文面からは、生きることの大切さが伝わってきて、皆輝きのある充実した人生を送っていると思いました。私は今まで感じたことのない新鮮な思いに満ち、エブリワンに大変興味を感じていました。
 私は五体満足です。でも数カ月前、心が病んでいました。情報処理の仕事をしている私は、朝早くから深夜までパソコンと向き合う毎日です。人と関わる時間も少なく、とても疲れていました。思い切ってエブリワンに連絡を取り、入会することにしました。
 活動に参加し、自身の生き方を見つめ直して心の中で再確認する日もあります。「心のハーモニーは自身にある。多くの人と真心で ふれ合い、みんなの幸せに向かって心から行動させて いただくことが、自身の幸せになる」という倉田理事長の言葉に、劣等感、差別感などの感情が少しずつ消えて行くのを最近感じます。
 自分の欲だけを考えていないか、周りに対して感謝の姿勢が欠けていないか。エブリワンは、人として一番大切な部分を私に気付かせてくれました。私自身の心を人間らしく変えてくれる、貴重な安らぎの場だと思っています。
 いきいき と歩んでいるエブリワンの仲間と接し、何かを「する」のでなく、感謝して活動を「させていただく」こと。そして、自分から多くの人と積極的にふれ合う大切さに気付き、それを心がけています。いま、真の友も増え、楽しみながら心温かい会話に充実した喜びを感じています。人生自分ひとりで生きているのでなく、多くの人に生かされていること。そして、自分自身の可能性が広がり、人生に自信が持てるようになってきました。
 人生、先のことは わかりません。今後 苦労もあるかもしれません。しかし、エブリワンで気付けたことを、日々の生活に、そしてエブリワンで生かし続けて行きたいと思います。そのような思いにしてくれたエブリワンに、魅力を感じ、感謝しています。
 今の自分から一歩でも前進したいと思う皆さん!。エブリワンへの参加をお勧めします。


 

No.65
内山瑞絵(25)

 
2002.10.5 掲載
「ありがとう」のひと言に支えられて


後の列右から2番目

 私は、いま介護員として働いている。私が介護の道を選んだのは、14年前 祖母が半身マヒになったことがきっかけだった。祖母への献身的な祖父の介護を見て、介護を受ける側とする側の気持ちを少しでも理解したいと思ったからだった。
 高校卒業後は短大で学び、介護福祉士の資格を取得した。一人ひとりが快適な生活を送れる介護を夢見て特別養護老人ホームへ就職したが、私が思っていた介護とは違っていた。食事、排泄の介護、入浴、シーツ交換等の業務だけで1日が終わってしまい、入居者と会話をする時間は ほとんどなかった。自分の思う介護と現実の間に大きな差を感じていた時、ヨーロッパの福祉先進国を視察する機会を得たのだった。
 視察では、介護保険について学んだり、福祉施設の見学をしたり。中でも印象に残っているのは「自分で出来ることは自分でやっていただく」ということが徹底していることだった。ドイツのデイケアセンターを見学した時、様々な疾病を抱えている利用者が自主的に食事の準備、後かたづけ、洗濯、アイロンがけ等をしていた。日本では職員が行っていることだった。
 スウェーデンのサービスハウス(介護付き住宅とデイケアセンターが一緒になった集合住宅)では、入居者が笑顔で私たちを歓迎してくれた。お茶を飲んだり、談笑したり、時間に追われる日本とは違い、そこには ゆったりとした時間が流れていた。入院が必要になった時も、入院あるいは在宅治療を受けるかは本人の意志で決めることが出来る。在宅を希望した場合は、専門医がハウスまで出向いてのケアも可能になっていた。
 視察で私が学んだことは、例え障碍者でも ひとりの人間として残された機能を活用して出来ることは自分でやっていただくこと。本人の意志を最大限に尊重することの大切さだった。視察をして1年7カ月後、私は重度身体障碍者更生援護施設に就職し、今年4月からは身体障碍者療護施設へ異動となった。いまは仕事に慣れていない分業務に追われる毎日だが、入所者からの「ありがとう」の言葉に心温められ、頑張る勇気を いただいている。
 仕事の傍ら7年前から参加しているエブリワンの活動では、月に1度 障碍者と共に買い物や外出を楽しんでいる。エブリワンでは障碍者と健常者の間に壁はなく、会員同士が互いに助け合って交流を深め合っている。エブリワンで出会う仲間が頑張る姿は、私の心の支えでもある。
 介護福祉士となって5年。いま、私は「ありがとう」の重みと仲間の存在の大きさを実感している。
 


 

No.64
理事長 倉田知典(32)

 
2002.9.7 掲載
『♪ 人情あふれる絆を結ぼう ♪』

 私は、全介添えを要す肢体不自由です。
 いつも多くの方の心を笑顔にしたいと夢を持ちつつ、年頃の私、一方では恋人が出来ないのが悩みです。ハイ(苦笑)。
 発足11年目。おかげさまで エブリワンは NPO 法人となり、皆様には心より感謝しています。
 私の活動の一つとして、県内外の福祉系の関係機関、大学等にて講師活動をさせて いただいてます。11年の間に時代は変化し、福祉も向上していると肌で感じます。
 聴講生の感想は「就職する前に通っていた福祉大学でも障碍者の講師を招いていたが、よく聞く話は障碍者権利は あたり前 ということだった。でも、倉田さんの話は多くの人の心を わかりたいということ。その発想に感動した」
 「ボランティアをしている。これまで、障碍者と仲間として ふれて来たつもりだったが、今回 倉田さんの話を聞いて、個人的に本音で話せる友達がいない ことに気付いた。今までは自己満足だと思った」というものが多いのです。
 物理的な ものは向上しても、大切な人々の『心の絆』は深めあえていないと私は思います。最近は、健常者同士でも真の友達が出来ないと悩んでいる人が多いようです。福祉サービスが増える反面、割り切った付きあいしか できない環境になりつつあると感じます。『心の絆』を結ぶ場が減ることは、人情と人間らしさを失うこと。タマシイの ない社会は寂しい限りです。
 今回 エブリワンは NPO 法人になりましたが、法人というと公的サービスを提供する会として考えられがちです。エブリワンではサービスも無ければ、人々全ての立場、ジャンル、枠もありません。個性ある友達作りの場『心のハーモニー』を奏でることを目的とした会です。
 今後 エブリワンと みなさんの交流は、さらに盛んに なることでしょう。講師活動においても「学ぶ」で無く、楽しく語りあう『心の絆』の輪を広げる きっかけにしたいと思っています。
 真の自立は『心の絆』を結びあうことだと思います。互いの良いところを自然に見ることができ、感謝しあい、相手の足りぬ ところを補いあう。そんな輪が広がれば、自身の良い個性が発揮できてステキな社会になります。
 「見えるものより 見えないもの(心)を感じ、信じあって いきたい」。全ての人々が友達となり、『心の絆』が満ちあふれるようにしたい。
 それが、私の願いです。